へなちょこリリーの惚れ薬
「リリー!」
「……」

気付いていない。
リリーは、学校の鍵を、カシャンと、壊した。

(いつのまに、あんな魔法を……?)

開錠の呪文なんて、使えなかったはず。

リリーは、迷わずに学校の庭に入っていく。

「リリー、待って!!」
「……トレニア? どうしたの?」
「どうしたのって聞きたいのにはこっちよ!」
「黒百合を探してるの。話したでしょ?」

リリーは寝惚けているわけじゃなさそうだ。

「話したでしょ? じゃないよ! 今何時だと……」
「私の部屋に来たの」
「はあ?」
「だから! 彼女が来たの! 『探しなさい』って」
「……で、なんで学校なの?」

なんて、説明したらいいかしら。

「城のバラ園があったでしょ? そこと、学校のバラ園が、そっくりなのよ」
「ゴメン、意味わかんない」
「天才なんだからわかってよ」
「……じゃー、行こうか。止めたって行くんでしょ」
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