幼なじみの脳外科医とお見合いしたら、溺愛が待っていました。
1 お見合いでの最悪な再会
 高級ホテル三階にあるレストランの個室で、私、日比谷(ひびや)愛未(まなみ)は小さくため息を吐いた。

 チラリと左右を見ると、叔父の日比谷裕二(ゆうじ)と叔母の由美子(ゆみこ)が、緊張した面持ちで私の両隣に座っている。

 本当であれば、私の席には叔父夫婦のひとり娘、日比谷綾乃(あやの)が座るはずだった。

 私が代役を打診されたのは、一週間前の仕事終わり。

 叔父夫婦はわざわざ私が暮らすアパートまでやって来て、しきりに説得してきた。

 私が何度断っても、どうしても出てくれと言うばかりで、まったく話し合いにならない。

 最初は戸惑いつつも、そこまで熱心に頼まれるなら顔を出すだけでも……と次第に思えてきた。

 引き受けることにした私は、叔父の家で叔母が用意したワンピースに着替え、叔父が運転する車でこの高級ホテルに到着した。

 そうして今、綾乃の身代わりとなりここに座っている。

 私と綾乃は同学年の二十九歳。

 私は身長百五十五センチと平均より少し小さく色白で、肩くらいまで伸ばしたやわらかい髪は小さい頃からややブラウンがかっている。

 鼻と口は小さめだが目は大きいほうで、普段はナチュラルメイクなので実年齢より若く見られることが多い。

 一方の綾乃は私より十センチ以上背が高く、目もとは叔母に似て細く涼しげな印象だ。

 黒くて艶のある長い髪とスラリとしたスタイルで、まるでモデルのようだと彼女を溺愛している叔父と叔母が昔からよく褒めている。

 叔母が用意した黒色のエレガントなパフスリーブのワンピースはとても美しいラインなのだが、私が着用するとフレアスカートの丈が長く野暮ったい印象だった。

 綾乃ならもっと似合っていただろうなと思うと、先ほどよりも大きなため息が出そうだった。

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