幼なじみの脳外科医とお見合いしたら、溺愛が待っていました。
 両親が亡くなってから、私はずっとひとりだった。

 寂しくて辛くて、家族三人で仲良く暮らしていた頃に戻りたいと、何度も何度も切に願った。

 私が中学校で嫌がらせを受け、孤立しているのは、誰にも相談できなかった。

 叔父や叔母には心配をかけたくないし、綾乃が原因だと話しても、彼女を溺愛しているふたりが信じるはずはない。

 それに、担任の件もあり、綾乃の報復も怖かった。

 綾乃は中学卒業後も私を敵視し、なにかにつけて因縁をつけてきた。

 叔父夫婦の意向で、綾乃と同じ高校へと進学した私は、目立たないよう注意して過ごした。

『あんたのせいでまた誰かが傷つくかもね』

 彼女ならやりかねない。

 綾乃は個人的に私という存在が大嫌いで、不幸になってほしくて仕方ないのだと思う。

 学校に友だちができず、家で家族を信用できない私には、両親を失ってから駅前商店街が心の拠り所だった。

『せっかくパパが用意した縁談なのに、何様のつもり? 断りでもしたらパパの顔に泥を塗ることになるって、気づかないの?』

 断れば、駅前商店街のあらぬ噂を流され、私はまたひとりになるかもしれない……。

 そう思うと、もう会うことはないと思っていた秀一郎さんの顔が頭に浮かんだ。


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