幼なじみの脳外科医とお見合いしたら、溺愛が待っていました。
その日帰宅すると、先方から結婚を前提にまた会ってほしいと連絡がきたと、叔父から電話があった。
綾乃に会った直後だったため、応じたいと叔父に話すと、叔父は声を弾ませて了承した。
その連絡から一週間後。
四月に入り、お見合いのときは満開だった桜は散ってしまった。
あのときと同じ高級ホテル一の階のカフェで、私は先に来て窓際のテーブル席に就いていた秀一郎さんにおそるおそる声をかける。
「こ、こんにちは」
険しい表情で中庭を眺めていた秀一郎さんは、私を見て「ああ」と一言、煙たそうに答えた。
しょっぱなからこんなに不機嫌そうでは、心が挫けそうになる。
私は気持ちを落ち着かせるために小さく深呼吸をして、彼の向かいの椅子に腰を下ろした。
すぐに店員さんがやって来て、ふたり分のコーヒーを注文する。
「あの、この縁談をすすめてくださるとのことで」
私が切り出すと、秀一郎さんはまっすぐに私を見つめた。
「先日話したとおりだ。俺は誰とでもいいから愛のない結婚をするつもりだ」
迷いのない強い眼差しから、目をそらせない。
「誰でもいいのに、なぜ私と……?」
「母が言っていただろう。父は友人の娘であるきみを気に入ってる」
「そ、そうですか」
愛のない結婚という言葉がどうしても引っかかる。
結婚したら同居して、生活をともにし、互いの家族との交流も生まれる。
秀一郎さんは医師として忙しいだろうし、私もoliveで働き続けたい。きっと共有する時間はあまり長くはないはずだ。
ご家族はいい方ばかりなのはわかっているし、向こうが望んでくれているのは喜ばしいと思える。
それに愛のない結婚ならば、寝室を同じくするなんて状況も考えられないだろう。
この結婚はむしろ、oliveと駅前商店街を失いたくない私にとって、申し分ない条件かもしれない。
……冷酷で怖い秀一郎さんに慣れさえすれば。
綾乃に会った直後だったため、応じたいと叔父に話すと、叔父は声を弾ませて了承した。
その連絡から一週間後。
四月に入り、お見合いのときは満開だった桜は散ってしまった。
あのときと同じ高級ホテル一の階のカフェで、私は先に来て窓際のテーブル席に就いていた秀一郎さんにおそるおそる声をかける。
「こ、こんにちは」
険しい表情で中庭を眺めていた秀一郎さんは、私を見て「ああ」と一言、煙たそうに答えた。
しょっぱなからこんなに不機嫌そうでは、心が挫けそうになる。
私は気持ちを落ち着かせるために小さく深呼吸をして、彼の向かいの椅子に腰を下ろした。
すぐに店員さんがやって来て、ふたり分のコーヒーを注文する。
「あの、この縁談をすすめてくださるとのことで」
私が切り出すと、秀一郎さんはまっすぐに私を見つめた。
「先日話したとおりだ。俺は誰とでもいいから愛のない結婚をするつもりだ」
迷いのない強い眼差しから、目をそらせない。
「誰でもいいのに、なぜ私と……?」
「母が言っていただろう。父は友人の娘であるきみを気に入ってる」
「そ、そうですか」
愛のない結婚という言葉がどうしても引っかかる。
結婚したら同居して、生活をともにし、互いの家族との交流も生まれる。
秀一郎さんは医師として忙しいだろうし、私もoliveで働き続けたい。きっと共有する時間はあまり長くはないはずだ。
ご家族はいい方ばかりなのはわかっているし、向こうが望んでくれているのは喜ばしいと思える。
それに愛のない結婚ならば、寝室を同じくするなんて状況も考えられないだろう。
この結婚はむしろ、oliveと駅前商店街を失いたくない私にとって、申し分ない条件かもしれない。
……冷酷で怖い秀一郎さんに慣れさえすれば。