幼なじみの脳外科医とお見合いしたら、溺愛が待っていました。
2 同窓会はいい夫婦のはじまり?
 五月の大型連休が終わりに差し掛かる頃、私は新居に引っ越した。

 都内の主要駅から徒歩十分、緑に囲まれた閑静な住宅街にあるメゾネットタイプの高級マンションは、秀一郎さんが選んだ。

 四LDKの広々とした間取りで、室内は落ち着いたブラウンと白で統一されており、リビングの大きな窓からは専用庭に出られるようになっている。

 家具もすでに秀一郎さんによって、モダンで温かみのある、センスのいいデザインで揃っていた。

「気持ちいい風……」

 私は窓を開け、抜ける青空を見上げて独り言をつぶやいた。

 大都会の一等地だと忘れるくらい、緑の葉を揺らす風は心地いい。

 庭に植えられている山帽子は、あともう少しで白かピンク色の大きな花が咲くだろう。

 もしこの庭を自由にしていいのなら、どんな花を植えようか、考えるだけで心が弾んだ。

 季節ごとに楽しめる花を少しずつ植えるのもいいし、思いきってバラのアーチを作り、育ててみるのも楽しそうだ。

 鮮やかな花や木がこの視界いっぱいに広がったらどんなに素敵だろう……。

 そう思い、自然と笑顔になったとき。

「荷解きは終わったのか?」

 秀一郎さんから声をかけられ、憧れの庭園を思い描いていた私はハッとした。

「はい、終わりました」
「早いな」
「荷物が少ないので」

 引っ越し業者も秀一郎さんが手配してくれた。

 ひとり暮らしのアパートで使っていた家具や家電はすべて手放し、衣服や本、両親との思い出のアルバムなどを段ボールに詰めて持ってきた。

 私は二階の洋室を自室として使わせてもらい、隣は秀一郎さんの書斎だ。

 一階のリビングの隣には広い寝室があるけれど、お互い自室と書斎にもベッドが用意されて、寝室は別にできそうだ。

「あの、ご飯はどうされますか?」

 時刻は午後四時。

 そろそろ夕飯の準備がしたいので、私はおずおずと秀一郎さんに聞いた。

「これから散歩がてら近所にあるスーパーに買い物に行こうかと思ってるんですけど」

 言いかけて、キッチンにある冷蔵庫の方を見た。

 秀一郎さんも大型連休中に引っ越してきたそうで、まだ中には飲み物しかない。
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