幼なじみの脳外科医とお見合いしたら、溺愛が待っていました。
 すれ違い生活が続くなか、私は毎日自炊していた。

 さすがに初日に拒否されて、秀一郎さんの分を用意する気にはなれなかった。

 だけど、ひょっとしたらたまたま帰宅が早く、気が変わって一緒に食べる流れになると困るので、私は毎晩多めに作っていた。

 奇跡が起こったところで、口に合うかはわからないけれど……。

 それに再び関わるなと言われ、冷たくあしらわれるのは怖い。

 それでも一応家族になったのだから、少しは距離を縮めたかった。

 そうすれば、中学時代は優しくて人気者だった秀一郎さんがどうしてあそこまで冷たい人間になってしまったのか、わかるのではないかと思ったのだ。

 けれども私の手料理を食べてもらう機会は訪れないまま、多めに作った夕飯は翌朝私の朝食になるという生活が続いた五月の末。

「え? 同窓会、ですか?」

 休日の昼下がり。

 秀一郎さんにめずらしく話しかけられ、私は目をしばたたかせて聞き返した。

「ああ。招待状が届いている」

 これから庭に出て草花の手入れをしようとしていた私は、つばの広い帽子を脱ぎ、秀一郎さんから白い封筒を受け取った。

 ちなみに庭には、秀一郎さんの許可を得て好きな花を植えている。

 パンジーやカーネーション、マリーゴールドなど、カラフルでとても可愛い。

「大学の創立記念日に医学部の同窓会が開かれるんだ」

 秀一郎さんに手渡された招待状を確認した。

 場所は高級ホテルのバンケットルームで、日時は二週間後の週末となっている。

 ご夫婦やご家族でぜひご参加ください、と締めくくられていた。
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