幼なじみの脳外科医とお見合いしたら、溺愛が待っていました。
「桐谷! 久しぶりだな」
「結婚したって本当だったんだなー!」

 明るい調子で話しかけてくる男性ふたりは、砕けた口調からどうやら同期のようだ。

「ああ、妻の愛未だ」
「はじめまして。どうぞよろしくお願いします」

 私はふたりに深々と頭を下げる。

 妻の愛未、という紹介に思わず胸がドキッとした。

 秀一郎さんの隣に立って、恥ずかしくないようにしないと……と気を引き締める。 

「はじめまして。俺たちは医学部で同期だったんです」
「こんなかわいい奥さんをもらって本当に幸せ者だな! 結婚おめでとう!」

 盛大な場の空気に気圧されていた私は、ふたりの穏やかな笑顔に少し肩が軽くなった。

「ありがとうございます」

 何組もそういった相手が続いた後、秀一郎さんが先輩と仕事の件で話し込んだ。

 途中まで話の邪魔にならないようにそばに立っていたけれど、やがて他の方々も加わって会話が白熱していったので、私は秀一郎さんに断りを入れてロビーに移動した。

 会場を出てロビーに設置された椅子に座り、ひと息吐く。

 慣れない場の緊張感からようやく解放されたけれど、秀一郎さんに心配をかけないためにもそろそろ戻った方がいいかな……。

 そう思って立ち上がろうとしたとき、こちらに近づいてくる人影が視界に入り、私は目を疑った。

「あ、綾乃……!?」

 驚きすぎて思いのほか大きな声が出てしまった。

 まさか綾乃がいるとは思ってもみなかったので、予想外の出来事に呼吸がままならない。

「やっぱり、愛未も来てたのね」

 目の前で足を止めた綾乃は、私を見下ろして冷たく言った。

 目が覚めるような真っ青のセットアップドレスを着用していて、光沢のある生地とモデルのような美しさも相まって、かなり目立っている。

「ど、どうしてここへ……?」

 声が震えた。

 oliveでの出来事を思い出し、身構えずにはいられない。

 それに、嫌がらせをしている証拠があるわけじゃないけれど、警戒してしまう。
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