幼なじみの脳外科医とお見合いしたら、溺愛が待っていました。
 帰宅して、夕飯にカレイの煮付け、かぼちゃのそぼろ煮と茄子の揚げびたし、だし巻き卵とほうれん草のごま和え、アサリの味噌汁を作った。

 どれもひとり暮らしを始めてからインターネットでレシピを調べて作れるようになったもの。

「お口に合えばいいのですが」

 ダイニングテーブルを挟み向かいの席に座る秀一郎さんを、私はこわごわ見つめる。

「いただきます」

 カレイの煮付けを綺麗な所作で口もとに運んだ秀一郎さんは、次にご飯を食べた。

「美味しい」

 心臓が痛いくらいドキドキしていた私は、椅子から跳びはねたくなった。

「うれしい……! よかったです!」

 満面の笑みで喜びを噛み締めた私も、「いただきます!」と両手を合わせて箸を持つ。

 すると正面から視線を感じた。

 顔を上げると、秀一郎さんとパチリと目が合う。

 すぐにフッと逸らされたので、あまりはしゃぎすぎてうるさいと思われたかな……。

 反省した私は肩を縮こませ、静かに食べ始めた。

 秀一郎さんに美味しいと言ってもらえたのが本当にうれしくて、これからはもっと一緒に食卓を囲む機会が増えたらいいなと思った。


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