幼なじみの脳外科医とお見合いしたら、溺愛が待っていました。
けれどもその日から、秀一郎さんの帰宅時間が遅く深夜になる日が多くなった。
仕事にストイックなのは尊敬するけれど、働き詰めで体は大丈夫なのだろうかと気になっていたある日。
七月に入り、気温が上昇し毎日暑い。
仕事を終え帰宅した私は、リビングで窓の前に立ち、庭の草花を眺めていた。
「ぼちぼち夕飯の支度でもしようかな」
キッチンに足を向けた矢先、玄関のドアが開く音が聞こえた。
「え……秀一郎さん?」
まだ時刻は午後六時過ぎで、いつもの帰宅時間より遥かに早い。
不思議に思って廊下に出ると、玄関のたたきで靴を脱いだ秀一郎さんが壁にもたれかかっていた。
「大丈夫ですか!?」
すぐさま駆け寄り、私は背後から背中を支えた。
うなだれる秀一郎さんの顔色は青白く、辛そうに顔を歪めている。かなり体調が悪そうだ。
「お部屋まで一緒に行きますね」
息は切れ切れでかなり苦しそうな秀一郎さんの体を支え、私はなんとか階段を上る。
書斎に入り、秀一郎さんをベッドに座らせた。
「このままお休みになりますか? それともなにか少しでも食べられそうなものをお持ちしましょうか」
「いや、寝れば治る」
鬱陶しそうに返され、私は口をつぐむ。
お医者様の発言とは思えないけれど、おそらく今すぐ横になりたいくらい体が辛いのだろう。
「わかりました。なにかしてほしいことがあったら、いつでも呼んでくださいね」
そう言い残して、私は書斎を後にした。
キッチンに戻り、夕飯の準備をしようとしても、弱った秀一郎さんの顔が頭に浮かんでくる。
仕事に忙殺され、いつか体を壊すのではないかと心配していた。
こうなる前に、もっと早めに気遣えたらよかった……。