幼なじみの脳外科医とお見合いしたら、溺愛が待っていました。
 駅前商店街で夕飯の買い物をしてから帰宅した。

 肉屋のおばちゃんに今日も牛肉コロッケをおまけして貰ったのだ。

 ご飯を炊き、キャベツを千切りにしてサラダを作り、野菜たっぷりの味噌汁を作っているときに秀一郎さんが帰宅した。

 時刻は午後八時を回っている。

「おかえりなさい」

 キッチンで慌てて調理している私を見て、いつもポーカーフェイスな秀一郎さんが目をむいた。

「すみません、帰ってくるのが遅くなってしまって。今準備できますので」
「いや、急がなくてもいい」

 そうは言われても、いつもならもう夕飯の準備はできているし、今日に限って秀一郎さんの帰宅時間も早い。

「oliveの織部店長が足を骨折して、入院したんです」

 私はお玉で鍋に味噌を溶かしながら話した。

 それから身を翻し、背伸びしてキャビネットから食器を取り出そうとすると、隣から伸びてきた骨ばった手がヒョイッとお椀を掴んだ。

「足のどこ? 病院は?」

 その手の主である秀一郎さんに至近距離で聞かれ、私は一瞬ポカンとする。

「く、くるぶしだそうです。入院しているのは叔父が働いている大学病院で」

 キッチンに並んで立ち、夕飯の準備を手伝ってくれている貴重な状況になかば放心した私は、間の抜けた声で答えた。

「なるほど」

 短く言った秀一郎さんは、お盆にふたり分のお箸を置く。

 隣の私は緊張で体をこわばらせながら、出来上がった味噌汁をぎこちなくお椀によそった。

「留守の間oliveを任せられたので、明日から勤務時間が長くなりそうです」
「わかった」

 秀一郎さんは流れるような動きで私からお椀を受け取ると、それをお盆に乗せダイニングテーブルに運ぶ。

 夕飯が並べられ、ふたり向かい合って座り、両手を合わせた。
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