幼なじみの脳外科医とお見合いしたら、溺愛が待っていました。
「いただきます」

 なんだかこういうの、共同作業っていうのかな? 息もピッタリで、形だけではなく本物の夫婦みたいでちょっぴりこそばゆい。

「すみません、お待たせしてしまって」

 それに手伝ってもらったので申し訳ない気持ちで私が言うと、お箸を持った秀一郎さんは事も無げに首を振る。

「いや。いつも作ってもらえるだけで感謝してる」
「え! あ、ありがとうございます……」

 うれしい言葉に頬が熱くなるのを感じて、私は恥ずかしくて出来たての味噌汁を急いで啜った。

「この駅前商店街の肉屋の牛肉コロッケ、すごく美味しいんですよ!」
「そうか、早速食べてみるよ」
「はい!」

 自然と頬が綻び、秀一郎さんと目が合うと瞬時に気恥ずかしくなる。

 秀一郎さんの気遣いに胸がいっぱいになって、今日一日の気疲れがいっきに吹っ飛んだ気がした。

 きっと本物の夫婦や家族は、こんなふうに思いやりをもって日常を過ごし、癒やされたり元気づけられたりして支え合っているのかなと想像する。

 私たちも今、そんな関係に近づけているのかと思うと、心が満たされていくように感じた。



 それから三日後、織部店長の足の手術は無事に終わり、一週間ほど経過観察とリハビリのため入院することになった。

 私はoliveをひとりで営業し、閉店後は織部店長のお見舞いに行って、帰宅し急いで夕飯を作る。

 夕飯のメインは簡単な丼物が多くなっていて、副菜は前日の夜に仕込み、あとは汁物を付けるようにしていた。

 秀一郎さんは献立に関して口出しせず、準備や後片付けは手伝い、必ず完食してくれる。

 そんな帰宅後の共に過ごす時間が楽しみで、いつしか仕事のモチベーションになっていた。

 帰宅したら秀一郎さんと一緒に夕飯だ、と思うと、やる気が出てがんばれる。

 これまで仕事が生きがいだと言っても過言ではなかったので、そんな存在ができたことが新鮮だった。
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