幼なじみの脳外科医とお見合いしたら、溺愛が待っていました。
私は気を取り直してテーブルの上の花材を持つと、秀一郎さんに笑顔を向けた。
「あ、でも私が持っていったのはこのプリザーブドフラワーだったので大丈夫だったんですけどね。織部店長がすごく喜んでくれたので、また好きな花を見せたあげたくて」
「好きな花?」
「はい、ミニひまわりです」
本当はひまわりが好きなのだけれど、瓶詰めしたいのでさすがに大きすぎる。
ミニひまわりも鮮やかな黄色がとても綺麗なので、病室に置いて明るい雰囲気になればいいなぁと思う。
織部店長が少しでも好きな花に触れて、元気になってくれたらうれしい。
「きみは、毎日お見舞いに?」
ミニひまわりを見つめていた私は、秀一郎さんの質問に顔を上げた。
「はい。織部店長は家族のような特別な存在なので、なるべく毎日うかがいたいなと思っていて」
「家族のような存在……」
うつむき加減でつぶやいた秀一郎さんは、ドアを背にして腕を組む。
そしてスッと前を向き、私を射貫いた。
「今の愛未の家族は、俺だろ?」
揺るぎない眼差しで見つめられ、私は閉口する。
まるで宝石のような漆黒の瞳に捕らえられ、目を離せない。
ハッとするほど美しい造形に、呼吸を忘れて咳き込みそうになる。
返事もせずにただ立ち尽くすことしかできない私を取り残し、秀一郎さんは部屋から出て行った。