幼なじみの脳外科医とお見合いしたら、溺愛が待っていました。
その一週間後、織部店長は無事に退院した。
けれどもまだ松葉杖が必要なので、無理をしない範囲で事務仕事をすることになった。
駅前商店街の方たちも退院をすごく喜んでくれたし、大好きな花に囲まれる織部店長の表情は晴れやかだ。
「愛未ちゃん、開店祝いのスタンド花の注文が入ったんだけど、頼めるかな?」
「はい、もちろんです!」
パソコンを操作する織部店長に聞かれ、接客を終えた私は張り切って返事をした。
「駅前商店街の空き店舗だったところに美容室がオープンするんだって。華やかなピンク系で注文がきてる」
「ピンクですか! それでしたらオリエンタルリリーとダリアで立体感を出して、あとはバラや金魚草でかわいらしくしてみたらどうでしょう」
「俺がいない間に、ずいぶん頼もしくなったね、愛未ちゃん」
織部店長から向けられる穏やかな目線に気づき、私はピンと背筋を伸ばす。
「いえいえ……! いつも織部店長が手がけるスタンド花を見てますから、勉強させてもらってて、今のもその受け売りです」
恐縮する私に、織部店長はニコッと微笑みかけた。
「今の愛未ちゃんは、イメージしてワクワクしている表情だったよ」
「えっ、そ、そうでしょうか」
自分ではわからないけれど、作るこちらまでうれしい気持ちで満たされる注文を受けて、心が躍ったのはたしかだった。
「愛未ちゃんなら、誰よりもお客様に喜んでいただけるものを作れそうだね」
「そんなそんな、買い被り過ぎです……」
かぶりを振る私に、織部店長は鷹揚な笑顔で続けた。
「俺が入院している間に、oliveを守ってくれて本当にどうもありがとう。これからもよろしくね」
「はい……ありがとうございます」
胸がいっぱいになって、私は深々と織部店長に頭を下げた。
私が手作りしてお見舞いに渡したミニひまわりのプリザーブドフラワーを、織部店長はすごく喜んでくれてデスクに飾ってくれている。