幼なじみの脳外科医とお見合いしたら、溺愛が待っていました。
 そして次に胸もとに顔をうずめ、チラリと私を見上げる。

「愛のない結婚だと言ったのも、取り消したいんだが……だめか?」

 甘えるような言い方に胸の奥がキュンとして、ギャップに心臓を撃ち抜かれる。

 普段の冷酷な印象からは想像もつかないくらい、ベッドではこんなに甘い表情を見せるなんて反則だ。

 私には、何度も首を左右に振るしか術がなかった。
 
「……私も、そうなったらいいなって思ってました」

 照れながら伝えると、秀一郎さんはフッと頬を緩めて顔を接近させた。

「そんなかわいいこと言われたら、加減が効かなくなりそうだ」

 言うが早いか、再び唇が塞がれる。

「んっ……!」

 先ほどソファで交わしたよりも濃厚なキスに、頭と顔が上気してクラクラした。

 秀一郎さんの節っぽくて大きな手がカットソーの裾からするりと侵入してきて、くすぐったさに思わず背中が跳ねた。

 その手にナイトブラをたくし上げられ、胸の膨らみを揉みしだかれる。

 未知の感覚に戸惑って、私は顔を背けた。

「あの私、経験がないので、うまくできるかわからなくて……」

 告白した矢先、今しがた私を懐柔しようとしていた秀一郎さんの動きがすべて停止し、寝室は静寂に包まれた。

 唇が触れ合うほどの距離で秀一郎さんは、片眉をつり上げ目を見開いている。

 もう恥ずかしさの限界で、堪らずに私は両手で顔面を覆った。

 するとすかさずチュッと生温かい感触が手の甲にあたり、それが何度も何度も繰り返されるので、観念して私は両手を解放する。

「愛未は、俺の腕の中にいるだけでいいから」

 これ以上にないと思えるほどの優しい眼差しでささやかれ、張っていた気が抜けた。

「そ、それだけでいいんですか?」

 きょとんとする私を見て、秀一郎さんはクッと片頬で笑う。

 余裕を見せつけられた気がして、急激に恥ずかしくなった。

「かわいい」

 真っ赤になっているであろう私を、秀一郎さんはことごとく甘やかす。

 唇や頬、耳もとや首筋に、順番にキスを落とされた。
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