幼なじみの脳外科医とお見合いしたら、溺愛が待っていました。
 するとすぐに、ご両親に出迎えられた。

「ふたりとも、よく来てくれたね」
「愛未ちゃん、お休みのところありがとう。来てくれてうれしいわ」

 笑顔のふたりを前に、私はガバッと頭を下げる。

「本日はお招きいただきありがとうございます!」
「そんなそんな、堅苦しい挨拶はいいから、早く上がってちょうだい。お昼ご飯できてるからね」

 お母様の優しい声に顔を上げ、私は手土産を差し出した。

「あの、今月お誕生日だと聞いてアレンジしてきました。水が漏れるかもしれませんので、玄関先で失礼ですがお受け取りいただけますか?」

 アレンジメントフラワーを受け取り、お母様は目を細めた。

「まあ、ダリア……とっても綺麗ね。どうもありがとう。すごく気に入ったわ」
「いえ、とんでもないです」

 華やかなアレンジメントフラワーを両手で大切そうに抱えるお母様の笑顔を見て、こちらも幸せな気持ちになる。

 お父様には、秀一郎さんからお好きだと聞いた老舗の和菓子を用意していて、そちらも喜んでくれた。

 秀一郎さんはどちらかと言うとお父様によく似ている。

 シャープな輪郭や涼しげな目もと、スッとした鼻梁の、類まれに見る端正な顔立ちだ。

 あまりにも整いすぎているからか、お父様は昔はもう少し冷たい印象があったのだけれど、今は療養中ということもあってか穏やかな佇まいだ。

 秀一郎さんも歳を重ねるとますますお父様に似てくるのかなと思うと、隣でその変化を見られることに楽しみを感じた。

 ダイニングに移動して四人での食事会は、とても和やかな雰囲気で進んだ。

 家族ぐるみで付き合いがあった頃の懐かしい思い出話や、秀一郎さんのご実家の庭に植えている花の話題で盛り上がった。

 広い庭の手入れは基本職人さんに任せているけれど、体調がいいときにお父様が外に出て花の世話をしたいのだそう。

 私は多年草であり日本家屋の和の雰囲気にも合いそうな芍薬や、何度も咲くので長く楽しめるアネモネをおすすめし、今度苗や腐葉土を運んでくる約束をした。

 料理はどれもすごく美味しかった。

 鰹節と青じそが効いたオムレツや、醤油ベースのきのこあんがかかったハンバーグなど、洋風の家庭料理が秀一郎さんの好きな和風にアレンジされていて、すぐにでも真似したいものばかり。
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