幼なじみの脳外科医とお見合いしたら、溺愛が待っていました。
 食後のアイスクリームを食べている頃には、まるで小中学時代にタイムスリップしたかのような気分になった。

 遊びに来たときに、よくこうしてアイスクリームを出してもらっていたっけ。

 懐かしい記憶に、つい頬が綻ぶ。

「愛未ちゃん、そのアイスクリーム、たくさん用意しておいたから帰りにお土産に持ってってね」

 お母様に言われ、私はスプーンを口もとをに運ぶ手を止めた。

「えっと、お土産までいただいてしまって、よろしいんでしょうか」
「もちろんもちろん! この人、毎年暑くなる頃に決まって体調を崩すのよ」

 お母様はやや怪訝そうな顔を作り、ダイニングテーブルを挟んで向かい側に座る秀一郎さんに目をやる。

「少しでも栄養価が高いものを選んでるから、愛未ちゃんも一緒に食べてね」
「はい……。ありがとうございます」

 私はペコリと頭を下げ、さすがお母様だなぁと思わずにはいられなかった。

 体調が悪くてご飯を受け付けないときでも、さっぱりと甘いミルク味のアイスクリームなら食べられるかもしれない。

 それでいて、乳や卵などを摂取できれば栄養になる。

 もしものときのために備えておこう、と心に決めた矢先。

「秀一郎、あなたは体調を崩さないようにしなさいね。くれぐれも愛未ちゃんに迷惑をかけないでよ」
「ああ、悪い。もう迷惑かけたかも」

 お母様の念押しをものともせず、秀一郎さんはしれっと白状した。

「あら、そうだったの? 愛未ちゃん、大変迷惑だったでしょう」
「いえいえ! 大変だなんて、そんなことは一切なくて」

 申し訳なさそうに眉を下げるお母様に対し、私はパタパタと両手を振る。
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