幼なじみの脳外科医とお見合いしたら、溺愛が待っていました。
 そしてヒョイッと紙袋を奪って素早く冷凍庫に入れ、今度は正面から私を抱きしめ唇をついばむ。

 表面が触れるだけのもどかしいキスに、私の体は正直な反応をした。
 
「愛未、腰が疼いてるよ」

 クイッと口端を上げた秀一郎さんが、触れ合いそうな距離で続ける。

「ねだってるように見えるけど?」

 ちょっと意地悪な言い方に、顔から火が出そうだった。

 初めて体を重ねて以来、ベッドルームで毎晩のように何度も抱かれ、次第に自分の体が変化していることに気づいた。

 秀一郎さんに指一本触れられただけで、お腹の奥がキュンとして甘く疼いて切なくなるのだ。

「秀一郎さんが、そんなふうに触れるからです……」

 緩急のある愛撫に惑わされるこっちの身にもなってほしくて、私は涙目で訴えた。

「煽るなよ」

 不本意そうにつぶやき、秀一郎さんは下を向く。

「そ、そんなつもりは……」
「参ったな」

 キッチン台を背にし、窮屈な体勢で追い詰められている私は、鋭い眼光に見つめられ体が震えた。

「怒った顔も、照れた顔もかわいいから、我を忘れそうだよ」

 私の体を軽々と抱き上げ、器用に頬や首筋にキスをし、淡々とした足取りでベッドルームに向かう。

 時間をかけてたっぷりと愛されて、我を忘れそうになるのは私の方だった。

 こんなに幸せでいいのかな?だなんて、つい数カ月前の私にはまるで想像もつかなかった悩みを抱くほど。

 秀一郎さんと過ごす穏やかで愛に満ちた毎日がずっと続けばいいのに、と願わずにはいられなかった。



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