幼なじみの脳外科医とお見合いしたら、溺愛が待っていました。
「元気がないようだけど、体調でも悪いのか?」

 久しぶりに夕飯の時間に帰宅した秀一郎さんを迎え、作り直した簡単メニューをふたりでいただいている最中。

「え、そうですか? 平気ですよ」

 心配そうにこちらを見つめる秀一郎さんに対し、私はいつもより高い声で答え、今できる最大限の笑顔を浮かべた。

「でもなんだか顔色が」
「今日、少し炎天下のもとを歩いたので。軽い熱中症かもしれません。そういえばちょっと頭が痛い気もして」

 秀一郎さんの言葉を遮り、つい早口に答える。

「そうか……」

 訝しげにつぶやかれ、変に思われたかなと不安を抱いたとき。

「大丈夫か?」

 正面からスッと伸びてきた大きな手が頬に到達する直前、私は反射的にその手を振り払っていた。

 パシッと乾いた音が響く。

「ご、ごめんなさい!」

 即座に謝るも、手を叩かれた秀一郎さんは瞠目した。

「休めば大丈夫です。明日の仕事にそなえて今夜は早く寝ますね」

 食事を途中で切り上げ、私は自分の茶碗を持って席を立った。

< 71 / 83 >

この作品をシェア

pagetop