幼なじみの脳外科医とお見合いしたら、溺愛が待っていました。
「この件を昨夜話そうとしたんだが、きみは体調が悪そうだったから今日にしようと思っていたんだ」

 打ち明けられ、私は気まずく下を向く。

「ごめんなさい。私昨日、秀一郎さんにお弁当を届けに行ったんです。そのときに女性と親密そうにしていたのを見て、勘違いしてしまって……」

 どんな事情かも知らずに思い悩んで勝手な行動を取り、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

 だけど。

「彼女の背中に手を回して、抱き寄せているように見えたから……」

 秀一郎さんが私以外の女性に触れるのは嫌だった。

 悲しくて苦しくて、立ってさえいられなくなるほど。

「バカだな」

 落ち込む私の頭に、秀一郎さんの額がコツンと当たる。

「俺は愛未しか見てないよ。どれだけきみに惚れてるかわかってなかったのか?」

 秀一郎さんの綺麗な顔立ちが視界いっぱいに広がって、その威力に私はまばたきを忘れた。

「きみに夢中で、ほかの女性なんて考えられないんだ」

 甘い言葉にブワッと顔面が熱くなる。体中に血流がめぐって、鼓動が速くなってきた。

 秀一郎さんはそんな私の反応にクッと声をこもらせて笑い、名残惜しげに体を離す。

「だけど、誤解させて悪かった。彼女はとにかく一番に子どもへの影響を案じて泣いていたから、どうにか安心させたいとは思ったが抱き寄せたりはしていないよ」
「はい……」

 思いつめて正常な判断ができなかったとはいえ、秀一郎さんを疑った自分を心から恥じた。

「でも、愛未はなぜすぐに日比谷綾乃の件を俺に相談しなかったんだ? 俺が多忙であまり家にいる時間を取れなかったのもあるかと思うが」

 改めて聞かれた私はひと呼吸置き、秀一郎さんを見上げた。

「さっき綾乃が削除したあの画像は、足を骨折している織部店長がよろめいた瞬間に、私が体を支えた場面が写っているんです」
「それを隠し撮りされて、不倫現場だと彼女に脅されたんだな。なるほど」

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