幼なじみの脳外科医とお見合いしたら、溺愛が待っていました。
6 めぐる季節に思いを馳せて
 その後、綾乃は私以外にも脅迫や不正を働いていたため、秀一郎さんが警察に連絡した。

 正直これまでは綾乃に対する負い目もあったけれど、脅しの常習犯である彼女をもうこれ以上見過ごすわけにはいかなかった。

 複数の事件で事情聴取を受けた綾乃は、脅迫の罪で被害者との示談が成立し不起訴となったらしい。

 病院関係者からの噂で聞いたと、秀一郎さんが教えてくれた。

 叔父は責任を感じて大学病院を退職し、叔母の実家がある東北の町に移住したそうだ。

 私はこれからも彼らの血縁者であるけれど、もう二度と会うことはないだろう。

 それでも、叔父夫婦への感謝の気持ちは今後も忘れないで生きていこうと思う。

 今後は綾乃が改心して、穏やかに生活してゆくことを私は遠くから願った。



 それから季節は移り変わり、再び再会した春が訪れる。

 ようやく桜のつぼみが綻んだ頃、私たちは昨年お見合いをした高級ホテルのバンケットルームで結婚披露宴を執り行う日を迎えた。

 同じ高級ホテルで行われた神前式の参列は親族のみだったけれど、披露宴の招待客は三百人以上だ。

 会場の装花は忙しい合間を縫い、すべて織部店長が担当してくれた。

『昔から妹みたいな存在だと思っていたから、愛未ちゃんが幸せになってくれてうれしいよ』

 と、喜んでデザインしてくれた織部店長の装花はうっとりするほど素敵で、この披露宴に参列される方はとてもオシャレで見応えのある演出に喜んでくれるだろう。

 そう思うと、oliveで長年働いてきたことがとても誇らしいし、織部店長のセンスのよさがもっと世間に広まればいいなと期待した。
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