彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網

再会

 私は二年前から大学の法学部で助手をしている。今日は担当教授である、三峰礼子教授の還暦を祝うパーティーだ。先生は私の父の担当弁護士をやってくださった縁がはじまりで、その後生活も含めて様々な相談にのってもらってきた。

 先生はその昔、弁護士として活動しながら、大学の法学部で授業をするようになった。今日のパーティには、先生の弁護士時代の知り合い、同僚や関係者、現在の大学の教授仲間と研究室のスタッフ、そしてたくさんの教え子が来ていた。

「水世、今日は親父が来るからあとで紹介する」

「野田君……」

 野田達也は弁護士一年生。同じ三峰ゼミ出身の同級生だ。彼は司法修習が終わり、父親のやっている事務所に就職が決まり、働き出して半年以上経った。

 今日は彼のお父様である野田所長も招待されている。元々先生と知り合いの所長が息子を先生の大学へと勧めたのがはじまりだったらしい。

 先生は先ほど冒頭のご挨拶でも話されていたが、還暦を機に少し授業を減らして非常勤にしていくという。そのせいで、先生は私に今後助手は必要ないから、他で就職を探すようにと数日前厳命された。

 それを私から聞いた野田君は、パラリーガルで自分のところに来ないかと誘ってくれた。私は野田事務所ではやりたいことが出来ないとわかっていたので、そのつもりはないと一度それとなく断った。ところが、彼は聞こえないふりをした。そして、今日直接お父様に私を紹介すると言ったきり、私の話に耳を傾けてくれなかった。
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