彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
彼がスーツケースを寝室へ運んでいる間に、私は彼の好きなモカのコーヒーを準備した。彼の特に好きなメーカーの豆を買ってあった。
彼は着替えてラフな部屋着になって戻った。ダイニングで香りをかいですぐにわかったのだろう。早速座ると嬉しそうにコーヒーを飲んでいた。食べ物に弱いのはどちらなんだか。コーヒー一杯で機嫌が直った。
「ああ……うまい。久しぶりに君の近くへ戻ってきたとこれで実感できた」
「それならよかったです」
「それにしても僕が帰るかもしれないと知りながら、まさか無視して諒介を優先するとは君はひどいな」
「それは先生が悪いんですよ。鍵を私に借りたいからこの時間取りに行くから待っていろときちんと事前に伝えるべきです。いつもそう言ってるじゃないですか。先生ひと言本当に足りないんですよ。大体、どうして一日以上早く戻ったんですか?」
先生はむっとして言った。
「それは……僕が早く帰ったら邪魔だったということか?僕がいないから諒介と約束したんだろう」
「先生どうしたんですか?変ですよ」
先生はカバンから袋を出して私に見せた。
「君へのお土産だ」
見ると、白ワイン。私がずっと欲しがっていた銘柄だ。結構お高いのだ。
「わー、先生これ買ってくださったんですか?」
「ああ、あちらで見つけた。日本より安いからな」
「だから買ってくれたんですか?」
「まあな」