彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網

「ありがとうございます」

 先生は立ち上がると上の棚からワイングラスを二脚出した。コルク抜きを出すように言う。

「えー、先生も今飲むんですか?もったいない……私のお土産じゃないんですか?」

「僕もせっかくだから味見がしたい。けちけちするな。また買ってやる」

 訳が分からない。どこがお土産なの?

「もう、しょうがないですね」

 私は買ってあったチーズや野菜を切ってディップを作った。先生は目を丸くして見ている。

「こんなにつまみを買い込んで一人で何してた?もしかして僕がいない間誰かと酒盛りしていたのか?」

「そんなわけないですよ。先生が戻った時に欲しがりそうなものを買っておいたんです。役に立ちましたね」

 テーブルにはつまみとワインが揃った。二人で乾杯した。

 私は先ほど川口先生と一緒の時にすでにワインを一本近く空けてしまっていた。そのせいでほろ酔いだったうえに、ずっと飲みたかった白ワインが美味しすぎて加減が効かなかった。寝落ちはしないが、飲みすぎるとしゃべりだす悪い癖が出始めた。

「……おい、飲みすぎだぞ」

 テーブルにはすでにお土産のワインのほかにもう一本新しいワインが半分空いていた。

「お爺ちゃん……どうして借金のこと……黙ってたのかな……また借金だよ、どうしてなの……」

「は?なんだって?」

 先生は私の隣に来てつぶやいた言葉が聞こえなかったのか、聞き返してきた。私の手にあるワイングラスを掴み上げた。そして、冷蔵庫からミネラルウオーターを持ってくると、そのコップに入れてそれを握らせた。
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