彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網

想いが通じた夜

 先生の寝室をノックした。

「入って」

「失礼します」

 大きなベッドが一つ。そして小さな机と椅子。ベッドと同じ色の深いブルーの壁紙。キングベッドに先生は腰かけてタブレットを見ていた。

「ああ、適当に座ってくれ」

「え?はい……ってどこに?」

「ここ」

 先生は自分の横のベッドを叩いた。

「……え?」

 立ち尽くす私に先生は言った。

「何かされるとでも思ったか?いや、何かしてもいいはずだよな。夫婦なのに僕はずっと我慢してきた」

「それはその……愛のない契約結婚ですから……」

「ふーん。愛のない、ね……」

 先生は私の腕をぐいっと引っ張って隣に無理やり座らせた。少し距離を置いて座りなおした私を見て、先生は近寄ってきた。私がまた距離を置こうと横へ移動したら壁にぶつかった。先生はにやりと笑って、詰めてきた。

「せ、先生……」

「逃げるから追い詰めたくなるんだよ。それよりさっきの話だが、少し酔いが覚めたなら色々初耳のこともあるし、少し聞かせてもらおうか」
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