彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
「……え?」
「まずは、君の育ての親である祖父母は確かブドウ農家だったな」
「はい、そうです」
「畑を売るとか借金がどうとか言ってたが、どういうことだ。おととい、諒介から君がまた取り立て屋に囲まれたと聞いた。君の周りは借金が好きだな」
「それはその、私も昨日初めて祖父から聞いたんです。四年前の借金が返せなくなって取り立てられているらしくて、畑を売って借金を返す計画があると聞きました。私は連帯保証人になっているので、それで取り立てが来たんです」
「君はもう働けないかもしれないとか、誰それと結婚とか、僕の妻なのに聞き捨てならないようなことを言っていた」
まずい……私酔っぱらって変なこと話したんだろうか。先生は睨むように私を見た。
「先生とは契約結婚でしたから、アメリカ出張後は離婚ですよね……」
「へえ、アメリカ出張後は離婚?ふーん、僕と離婚するのか。じゃあ、ひ孫はできないな。もしかして幼馴染と作るのか?」
「え?……えー!」
私はびっくりして口を抑えた。え、そんなことまで私話したの……。
「今更、口を抑えても遅い。詳しく聞かせてもらおうか」
「……それは、その……私何か変なこと言ったなら、ただの酔っ払いの戯言です。気にしないでください……」
先生は眉間にしわを寄せて語気を強めた。
「はっきり言いなさい。隠しても無駄だ。私は弁護士だ。その手合いの嘘などすぐにわかる。特に君はどぎまぎすると鼻がぴくぴくする」
私は鼻の上を抑えた。