彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
「君のお爺さんはそれをさせたくないから畑の売却を決めたんだろう。お爺さんの借金を肩代わりするには、お爺さんを納得させる理由がいる。君の隠している事実を公にする必要があるだろうな」
「それって……」
「僕らはすでに夫婦だということをお爺さんにお伝えして、借金を君の婿である僕が肩代わりすればいいだけのことだ。畑を買いとる必要などない。家族なんだからね。僕が相手ならあちらは法外な利子を付けられない。いいことずくめだ」
確かにその通りだ。でもそれでいいんだろうか……。先生は私達のためにお金を出したりしたら、離婚できなくなる。先生のご家族に挨拶もしていない後ろ暗い契約妻なのに、借金を肩代わりしてもらうなんて最低だ。
元から借金まみれの家系で、加害者家族なんて絶対反対するに決まっている。例の縁談を進めたいというご家族の気持ちも正直わかる。
「でも……そんなことをしたら本当に先生の一生を私が縛ってしまいそうでいやなんです。ご家族は契約結婚だと御存じだからアメリカの縁談も勧めておられるんですよね。私のために借金を肩代わりしたと知ったら、私を先生の妻になんて絶対許すことはないと思います」
バンッ!先生はテーブルをたたいて立ち上がった。
「僕のことはどうでもいい。結婚するときに言ったはずだ。君のことをぐちゃぐちゃ言うような家族なら僕の方から縁を切る」
私はびくりとして先生を見上げた。
「そ、そんなのだめ……」
「それならどうする気だ?君が借金を肩代わりするといって君のお爺さんは納得するのか?どうせお爺さんが肩入れしている幼馴染に畑を売ってしまうんじゃないのか?そうなれば君は借金返済だけじゃなく、今まで彼に頼っていたから求婚を断れない」