彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
 * * *

 野田君はお父様の所から戻ってくるといらいらしていた。そして私の腕を急につかんだ。

「水世、さっき話していたの黒羽先生だろ。あの人から何を言われたんだ」

「黒羽先生は加害者弁護も始めたそうなの。興味があるなら連絡してきなさいと言ってくださった」

「水世、まさかあそこで働く気なのか?黒羽先生は今色々言われてるぞ。知ってるだろ?」

「知っているわ。噂は嘘ばかりよ。野田君だってそれはわかっているでしょ」

「世間の噂がどれほど怖いか身に染みてるっていつも言ってたのは君だろう。下手をすると君もいらぬ腹を探られて巻き込まれるぞ」

「噂が間違いなんだから正々堂々と戦えばいいだけよ」

 私の様子を見て、何を言っても無駄だと思ったのだろう。

「水世……君は僕をどう思ってる?」

「どうって何?」

「実は……先ほど縁談をもちかけられた。最近は家でもこんな話ばかりだ。だから君を僕の所に入れたかったんだ。僕の気持ちは知ってるだろ?交際してほしいんだ」
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