彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
先生が身を乗り出してきた。
「そ、そんなことは……」
そんなことは……言えなかったけど、あるかもしれない。残念ながら、きっとそう。
「じゃあ、子供を作ろうか。それが君のお爺さんだけでなく、うちの父を納得させるのにも一番かもしれない」
「だ、だめです!」
先生は不思議そうに私を見た。
「……どうして?」
どうしてって、愛がないのに子供なんて作って離婚したら大変なだけだ。仕事でいくらでも見ている。
「愛がないのに子供を作って離婚したくありません」
「は?何を言ってる……」
「もしこの契約結婚を続けて子供を作るとしても、もう少し先生の様子を見て納得してから子供を作るかどうかは決めます」
「それはどういう意味だ?」
「……ひみつです」
先生が私と結婚したいのは佑と争っているだけだ。先生にとって私は大事な相性のいい秘書で、彼に取られたら困る。要は、大好きなおもちゃを取り合っているような感じに違いない。先生は元から愛とか恋とか考えない人なのは知っている。
「要するに、君が僕を認めてくれたら、君は僕の子を産んでくれるのか?」
ストレートすぎる……どうしてそんなことが真顔で言えるの?
「佳穂、真っ赤だぞ……」