彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網

幼馴染の本気

 先生はスーツケースの中から袋を出してきた。

「佳穂。お誕生日おめでとう」

「え?!」

「なんだ、そんなに驚くことか?諒介と先に誕生日ディナーを一緒にしていたくせに、僕が何も覚えてないと思っていたのか」

「そ、それはその……昨日ワインを頂きました」

「それは一緒に飲むためのお土産だ。これは誕生日プレゼントとして別で買ってあったものだよ」

「本当ですか?わざわざ?先生が私の為に?えー!」

 先生は顔を抑えて机に伏せた。

「君、その驚き方はなんだ……これでも僕は君の夫だ。帰国日だって君の誕生日に間に合うように考えていたんだぞ」

「いつも事務所で誕生日ケーキをみんなで食べるイメージがあって……嬉しいです。開けていいんですか?」

「もちろんだ」

 袋はあちらの有名宝石店のものだった。中には腕時計が入っていた。

「これ……すごく素敵です……」

 バングルの周りにいくつか小さな石が埋め込まれている。中央には文字盤があり、時計になっている。普段使いも出来そうで、センスのいい素敵なものだった。こういうものを欲しいと思っていたが手が出なかったのだ。ものすごく嬉しかった。

「この時計を見たら君にピッタリだと思ったんだ。君は甘さと硬さが同居する。この時計みたいだろ」

 得意げな先生。でも嬉しかった。私を思いながら選んでくれた。私を好きだと言っていたのは本当なんだと思えた。

「先生、ありがとうございます。これからは毎日つけますね」
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