彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
先生はそのバングルを持つと私の左腕に自らはめてくれた。
「よし。これでもう取れないぞ」
「ほら、取れますよ」
私は外して見せた。すると、先生は私の手からそれを取り上げてまた腕につけた。
「取れるけど、僕の前ではなるべくならつけているように……これは首輪がわりの腕輪だ。君は僕のものという意味だぞ」
「わかりました」
「よろしい。しかし、腕輪だけではだめだな。結婚するんだからリングも必要になった。今度同じブランドへ一緒に注文へ行こう」
「ありがとうございます。こんなブランド普段は高価で絶対買えません」
「君はこれから僕の妻になるんだから、欲しいものがあれば相談に応じよう」
「相談って……あはは、先生ったらやっぱりお仕事みたい。マリッジリングはおそろいにして先生もつけてくださいね。先生こそ私なんかと結婚なんてきっと最初は誰も信じないからリングをしていないとすぐに略奪されてしまいそうです」
「人の夫を略奪なんてできるわけがない。私は弁護士だ。略奪の罪で訴えてやる」
真顔で宣言する先生。私はあまりのことに噴き出した。
「ぷっ、略奪の罪って……もう、先生おかしすぎる……あはは」
「ま、余計な罪人を出さないためにも君と同じリングをして、僕は君のものだという証をつけておくとしよう」
「先生、このまま出社されますか?」
「ああ、そうだな。それと、とりあえず君はおじいさんに連絡して、明日にも僕が行くと伝えてくれ。もちろん、結婚と借金の件だ」
「先生のご家族は?」