彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
私に佐々木さんが話を振った。私はびっくりして顔を上げた。
「それにしても、先生。フォーブズに載ってしまったし、午後からが怖いですね」
佐々木さんが苦笑いしている。
「そうですね、電話とかきっとすごいですよ」
池田さんも言った。
「悪いが今日は繋がないでくれ。席を外していると言っておいてほしい。折り返しは明後日以降になる」
「え?どうしてですか?」
佐々木さんが聞いた。
「明日は水世の実家へ行ってくる。彼女のおじいさんが借金返済で畑を売る事態になっているらしい。早い方がいいので、対処してくる」
「わかりました」
* * *
実家に戻ると待っていたのは佑と祖父母だった。
先生は祖父母に挨拶が遅れたことを詫びてくれた。ふたりには私から契約結婚をしていたことや先生の出張までを一区切りと考えていたこと、話し合ってこのまま結婚生活を続けたいと伝えていた。
ふたりは先生に恩があるのもあって、表立って反対だとは言わなかった。だが、畑の借金の肩代わりの話になったとき、苦い顔をした。
「先生、お久しぶりです。俺のこと覚えてます?」