彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
佑が先生に挑むように言った。
「もちろんだよ。言われたことも、美味しいぶどうのことも全部覚えている」
「じゃあ、先生のやったことは弁護士としては卑怯だと言っても怒りませんよね?俺は前から佳穂と一緒になりたいと伝えていた。それを佳穂の父親のことを利用して契約結婚なんて弁護士の風上にもおけませんよ」
「そうかな?彼女の意思はどうなんだ?」
「……それは……」
「やめて、どうして喧嘩腰なんですか?」
「佳穂、実はな……畑のことだが、すでに佑君に売ることで手続きをしてしまったんじゃ。まさか契約結婚しているなんて……」
「え?どうして勝手に!」
「勝手なのはそっちもそうだろ。佳穂は先生との同居をお父さんの問題が解決したら解消すると言っていたのに、いつになっても戻ってこない。しかも、連絡すると先生の事情があるとかわけがわからないことを言ってごまかした」
「それは、だって本当に先生のほうでこの結婚を選択したのには事情があって……」
「だからだよ。そんな愛のない結婚馬鹿みたいだろ。こっちから本気を見せないと仕事が大事な佳穂は先生に嫌だとは言えないから戻ってこない。それに爺ちゃん達はお前が戻ってくるのを待っている。悪いが先生より、佳穂の相手は俺の方がいいんだよ。佳穂だって先生がいなかったら今頃間違いなく俺と一緒になっていた」
「だから、勝手に……」
おじいちゃんは私を見て言った。
「佳穂、かなりの金額を工面してくれた佑君にわしは頭があがらん。先生には恩義もあるが、佑君には今まで色々と面倒を見てもらっていたのも事実なんだよ」
「わかってる、そうだけど……」