彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網

 お爺ちゃんが焦った。

「僕は佳穂の夫です。本来なら家族ですから肩代わりどころか払うのが普通ですよ。でもそれでは納得できないでしょう。畑の収入や佳穂の給料分からいくらかもらいますから大丈夫です」

「佑。畑をよろしくお願いします。それと、色々今までありがとう。甘えてしまってごめんなさい」

 私は丁寧に頭を下げて佑に言った。

「わかったよ。甘えてくれて嬉しかった。これからも畑を通じて友達でいてくれよ」

「もちろんよ。何もかも隠さず話せるのは越してきてからあなただけだった。あなたのお陰で今の私がある。感謝してる。これからもよろしくね」

「ああ。先生、たまにはふたりで食事に行かせてくださいよ」

 先生はぴくりと眉を動かして私と佑を見た。

「略奪は罪だぞ」

 私と佑は顔を見合わせて笑った。

「略奪されないようしっかりしろよ、先生」

 佑はにやりと笑った。

「もちろんだ。佳穂、君も悪いことをしないように」

「どうして信用してないんですか?」

「君はほだされやすい。困った人だからね」

 おばあちゃんが先生に頭を下げてくれた。
< 123 / 141 >

この作品をシェア

pagetop