彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網

彼の家族

 帰りながら車の中で先生が私に言った。

「先ほど、蛍から連絡があった。明日にもうちの事務所に来るそうだ。その時結婚について話そう。蛍を味方につければスムーズだ。父は蛍に弱い」

「先生のところは確か離婚されてるんですよね?お母さまは今どちらに?」

「そのことだが……とりあえず、いったん帰ってからでもいいか」

 簡単なものだが作り置きのおかずで軽く乾杯した。

「しいたけも、それから人参も抜きましたから安心してくださいね」

「さすが僕専用の給食係。妻になるだけのことはある。ん?このオレンジ……まさか人参じゃないのか?」

 すりおろした人参を加えたポテトサラダに気づいたようだ。

「人参の味も、匂いもしないのによく気づきましたね」

「……」

 怒ったのかな?箸が止まって何か考えてる。

「ごめんなさい。無理に食べなくてもいいです」

「何だか……懐かしい」

「え?」

「母が昔よくこうやって僕の苦手なものを全部入れてきた。実はこういうふうにしてくれたら食べられるんだ」

「ふふふ、よかった」

「何だよ?」
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