彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
「黒羽先生……」

 先生は私のことをちらりと見ると、彼の正面に立った。黒羽先生のほうが、彼より背が数センチ高い。茶髪の彼の前に黒髪で濃紺のスーツを着た先生には威圧感があった。

「僕の所で彼女に何が起きるかはまだわからない。でもはっきりしているのは、このまま君の所に彼女が入ったら、それこそ君の父上の圧力で火あぶりになるだろう。君は彼女を守るべき役割のはずなのに、その覚悟も、力もないようだ」

「……なっ!初対面なのに何も知らず勝手なことを言わないでください。僕らのことはあなたに関係ないでしょう。噂通り失礼な人だな。敏腕だが口が悪く、ありとあらゆる弁護を引き受ける。悪魔の黒王子とか言われているそうじゃないですか」

 私は驚いた。こんなひどい言葉を達也の口から聞いたのは初めてだ。

「野田君やめて!失礼よ!」

「失礼なのはどっちだ!僕のことをこの人が今なんて言ってた?」

 黒羽先生は真っ赤になっている野田君を無視して私の前にメモを出した。

「さっき事務所に連絡して確認した。やる気があるならこの三日間のうちに面談へ来なさい」

「ありがとうございます」

「水世!こんな人の事務所に行くな!」
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