彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
「実はお兄ちゃんに色々お誘いが来てるみたいで、お父さんが話してみるって言ってた」
「やっぱりそうか……移籍となると僕の方に櫂の仕事をそのまま回すかもしれないと電話で大先生が言ってたんだよ」
「それだけじゃないみたいだけどね。リンダのこともあるし……」
蛍さんが私を見て手招きした。川口先生の秘書が呼びに来て先生は戻って行った。
佐々木さんと池田さんも外出してしまい、蛍さんと残された。
「あなたと契約結婚していた件、帰国したお兄ちゃんから最近聞いたの。お父さんはお兄ちゃんと幼馴染のリンダとの縁談をまとめるために内緒で後から渡米してたの」
「え?」
「契約だが結婚しているって言って皆を驚かせたらしくて……お父さんはびっくりして大騒ぎになったのよ」
「……そんな……」
「私はね、お兄ちゃんの様子が最近違ってたから絶対彼女が出来たか、恋愛してるのかもしれないと思ってたの。だって、若い女性が好きなジュエリーブランドはどれだとか聞いてきたのよ。絶対そうじゃない」
「……そうだったんですね」
「諒介先生もお兄ちゃんいないとき水世さんのこと褒めてた。お兄ちゃんいなくなったらもらいたいって……ねぇ、お兄ちゃんがここを出るようなことになったら何が何でもお兄ちゃんへ付いて行ってあげてね」
「え?」
「あの……諒介先生は最近その……縁談とか特定の人がいるか知ってる?」
蛍さんはまだ川口先生が好きなんだよね。モジモジしながら聞いてる。
「縁談は全てお断りされていました。特定の人は多分私が知る限りはいないと思います」