彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
「うちのお母さんのように身を引くの?」
蛍さんが私に聞いた。
「それは許さない。父さん、家族に何かあれば僕が全て被りますから、勘当してくれても構わない」
「……先生!」
「佳穂さん、お兄ちゃんは頑固なの知っているでしょ?」
「……え?」
蛍さんはいたずらっ子の様に笑った。
「お父さんにそういうところがそっくりなの。おそらく、何が何でも結婚したままにすると思うな。ねえ、お父さん、そう思わない?」
「櫂、何かあれば相談しなさい。ひとりで全てやろうとするな。彼女の言う通り家族にも影響がなんらか出るだろう。全て家族で相談して乗り越えよう。私も協力する。いいな、蛍」
「うん、もちろんだよ」
「ありがとう父さん、蛍。そうさせてもらうよ」
「ありがとうございます。ご迷惑おかけしてすみません」
「佳穂さん、今まで大変だったろう。これからは嫁となった以上私も全力で君を守るから安心しなさい。櫂には教えられたな。妻は君と同じ苦しみを乗り越えてきたから、櫂と君の結婚の話を聞いて、応援したいから邪魔するなと私に釘を刺したくらいだよ。君にも会いたがっている」
「うん。母さんは電話をくれたよ。佳穂に会いたがっていた」
「ご挨拶に伺います」