彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
「まあ、いいけど。私より櫂を息子にしたくて熱心だったのはうちのパパだからね。気の利かない櫂なんて私はどうでもよかったんだけど、あんたにフラれるのだけはプライドが許せない」
「だから、フってないだろ。結婚してたんだから縁談は受けられないだけだ」
「どうだか?私から逃げられないから急いで佳穂と入籍したんでしょ?」
「リンダこそ、好きな男がいるくせに、どうしてあいつには弱気なんだよ。僕には狼みたいにかみついてくるくせに……」
リンダさんはバシッと先生のお尻を叩いた。びっくりした。
「痛いな、いちいち手を出してくるな、妻の前で何するんだ!」
「なによっ!佳穂にそんなこと言うことないじゃない!だから、櫂はデリカシーがないって言うのよ!佳穂、こんなのと結婚すると大変でしょう?女性の気持ちなんて考えたことない人よ」
「そうですね、恋人としてというより、上司としては結構怖い人でした。大勢辞めさせてるんです」
「やっぱりねー、仕事と顔だけなのよ、櫂って……パパもそれに騙されたんだわ。自分のパパとは仲悪いくせに、うちのパパとは仲良しなのよ」
見ていたらよくわかった。忙しいのに渡米したのはそういうことだとわかった。娘さんとの縁談を断りたいのに、リンダのお父さんと仲がいいので仕事を受ける。そういうところも彼らしい。
「まあ、お幸せに。そうだ、佳穂。そのネックレス私が見繕ったのよ。よく似合うわ」
そうだと聞いていた。お礼が遅くなった。アメリカの同じお店で揃いを買ってきてくれたそうだ。
「ありがとうございます。とても気に入りました」
「あのとき腕時計を買って帰ったでしょ。それも一緒に行ってあげたの。だから大体、どんなものがいいかわかっていたからね」
「結局商品以上にお金を払わされた。リンダと付き合う奴は大変だ。大金持ちじゃないとな」