彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
「そうですね」
後ろに佑がいた。諒介先生は手を振っていなくなった。
「佑、今日は挙式から遠いところここまでありがとう」
夜の披露宴は東京。挙式は朝方田舎でやった。この披露宴にはお爺ちゃん達はきていない。黒羽家の親族で田舎に来なかった人やお仕事で親しい人、友人などが中心なのだ。私の知り合いは佑を含めて大学時代の友人など数名しかきていない。
「佳穂。綺麗だよ。あー、くやしいな」
「佑……」
「でも、黒羽先生のご家族は佳穂のこと大歓迎したんだってな。姑さんともすごく仲がいいし、うちとはえらい違いだよ。佳穂はここのほうが幸せになれるんだろうと見ていて思った」
「佑も幸せになってね。すごくモテるじゃない。私が消えて皆大喜びだよ、きっと。告白されまくりでしょ」
「……ま、そうだな。モテることはモテる」
「畑のほうも大変だろうけどよろしくね」
「ああ、たまには見に来いよ」
「うん」
すると、後ろから靴音がして、私の手を引っ張った。
「……佳穂!」
「え?あ、どうしたの、先生?」
「佑君。今日は色々ありがとう」