彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
「ヒュー!」

 男が私の髪をなでて、腕に触った。気持ちが悪かった。

「やめてください!」

「あの頃はまだ中学生だったよな。ずいぶんと綺麗になった。これなら色々と都合がいい」

 そんなとき、うしろから声がした。

「佳穂に触るな!」

 幼馴染の佑だった。車から出て私の所へ血相を変えて走ってきた。

 ところがサングラスの男は私の腕をつかんだまま、逆の手でサングラスを上げて佑をにらんだ。

「おやおや、君は誰かな?」

「俺は佳穂の幼馴染だ」

「幼馴染なんてお呼びじゃない。じゃあ、お前が代わりに300万円払え」

「300万?!な、なんだそれ……」

「なんだそれって、彼女のお父さんがうちに借りて返済せず逃げているんでね。調べたら、おじいさんも借金があるようだから払えないだろうね。そうなったら彼女しかいないだろう?」

 お爺ちゃんの借金はローンで返しているはず。四年前の設備投資の際のものだ。

「どういう……」

「さあ、来てもらおうか」

 すると、そのサングラスの男に電話がかかってきた。男はすぐに出た。
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