彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
 逆らえる人はいませんって、池田さんその言い方はどうかと思う。先生は私を真剣な目で見た。

「水世」

 面談前からクビになるのかもしれない。とりあえず謝っておこうと腹を決めた。

「……はい。すみません。これからは口に気を付けます……だから……」

「採用決定だ。ここに来たからには逃げはなしだぞ、いいな」

「……え?」

 池田さんが万歳しながら立ち上がった。

「やったー、整理整頓とさよならだー」

「何を言ってるんだ!せめて自分の机の上は片付けなさい!なんなんだ、その机は……」

 池田さんの顔が見えないほど書類が積み上げられた彼の机の上。先生は眉間をもんでいる。

「はい、頑張ってすぐ片付けます!自分の所だけならやる気がでるんですよ」

「ぷっ、あはは……」

 私は笑ってしまった。それを見ていた先生は私を嬉しそうに見ていた。

「水世、ちょっと来い」

 先生はそう言うと私を自分の部屋へ通した。


 


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