彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
「ありがとうございます……皆さんに何かご迷惑おかけしたらすみません」

「面接の日に変な人が来たって池田君から聞いたけど、先生が半年前から加害者弁護をはじめてから、ああいうことが多くなったの。先生の悪い噂も知っていると思うけど、それ以上に色々あったのよ。だから変な話、そういうたぐいの対処には警察からも指導が入って大分慣れているから心配しないでね」

 佐々木さんは苦笑いしながら言ってくれた。少しほっとした。

「でも先生と同居することになっちゃって……正直そこは心配でしかないです」

「まあ先生は知っての通り、相変わらず女性を遠ざけてるところがあるから、あまりそういう意味では心配しなくてもいいかもしれない。それに、あそこなら何があっても安心だよ」

 そういう意味って……。相変わらず、女性を遠ざけて暮らしているのね。

 佐々木さんは先生のマンションへ行ったことがないと言っていたが、池田さんは仕事で書類を取りに行ったり、先生が具合悪い時に入ったこともあると言っていた。

「いや、とにかくセキュリティーが厳しいんだよ。エレベーターも他の階の人と会わないようになっていたり、おそらく芸能人が住んでると思うよ」

 戻ってきた池田さんが話に加わった。

「そうなんですか」

「部屋も綺麗だし、眺望もすごい。ま、先生はほとんど寝に帰るだけらしいけどね」

「先生はなぜそんなところを借りているんでしょう?」

「セキュリティーが万全であそこに住んでるって前言ってたわよ。実はね、加害者弁護を初めて数週間で先生が一度暴漢に襲われたのよ。それで懲りたと言って引っ越したの」

 そうだったんだ……先生も大変だったんだと初めて知った。

「それにしても家賃が相当しそうです。少し払うにしてもどうしよう……」
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