彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
「それは心配いらないんじゃないの?ごはんでも作ってあげたら?」

「そんなのは当たり前です。私の分を作るなら先生のも作りますよ」

「忘れたの?先生は相変わらずの偏食よ。ごはんづくりはなかなか大変よ、きっと……あはは」

「そうでしたね、はあ……」

 思い出した。人参だのシイタケだの、色々食べられないものがある子供のような先生だった。

 * * *

 三峰先生に黒羽先生と同居することになってしまったと連絡した。先生を止めてくれるかと思ったのだ。ところが私がそれを勧めたのよと軽く返されて驚いた。独身の若い男女なのに先生は何も考えていないのかと驚いた。

「よくないですよ、先生。どうして黒羽先生と同居なんですか?独身の若い男の人と同居とかおかしいです」

「あら、もしかして黒羽君とそっちの方が心配なの?」

「そんなこと言ってませんよ!でも先生は結婚もされてないし、イケメンだし……こんなこと、誰かに知られたら変な話誤解されかねません」

「彼は女性嫌いなところがあるから大丈夫なのは知ってるでしょう。それにあなたを守るために考えてくれたのよ。割り切りなさいな。安全第一よ」

「……先生……」

「なぜ同居するかといえば、あなたを守るには彼にとってその方法が一番楽だからよ。あのマンションはセキュリティーがすごいの。彼自信が何度もあそこで守ってもらっているのよ。しばらくの間だから、彼の言う通りになさい」

「はい」

「それにね、ああいう手合いとの戦い方を黒羽君は熟知してる。申し訳ないけど私は弁護士業から離れて大分経つ。今は彼に戦ってもらった方がおそらくうまくいく」
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