彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
 先生と電話を切って、階段を下りた。リビングに佑がいた。お爺ちゃんが話しかけていたが、私が来たのを見て腰をあげた。

「佳穂、きちんと佑君にどうするのか話しなさい」

「はい」

 佑は私をにらむように見ている。

「佳穂。どうして独身の男の弁護士と一緒に住むなんて話になるんだ。知りもしない男と二人で住むとか常識がなさすぎる。それなら僕の所に来いよ」

「佑、心配かけてごめんね。今、三峰先生と話してたの」

「あの先生、なんなんだ。自分の教え子の弁護士を佳穂に紹介したとか平気な顔をして言うんだ。しかも独身の男とか俺に喧嘩売ってんのか!」

 興奮する佑に私は何も言い返せなかった。言ってることは正論だからだ。

「俺と一緒になればそんな心配はいらない。佳穂の爺さんや畑も一緒に守っていくよ」

 それを言われたら言い返せない。でも……それじゃ、私は何もできないまま。逃げるだけだ。

 何も言い返さない私を見て、佑はため息をついた。

「ごめん。わかってるよ……自分のやりたいことがあるからこそ法学部へ行ったんだもんな。俺の所にすぐに来るんじゃ、話は違うよな」

「……っ、ご、ごめんね、佑……今までもとても感謝してるの……でも私……」

 私が泣くのをこらえて話し出したのを見て、佑は私の横に来て肩を抱いた。

「佳穂、頼むから泣くなよ。お前に泣かれると本当にどうしていいかわからなくなるんだ。ようやく泣かなくなってきたのに……」

「黒羽先生のマンションはすごいセキュリティーらしいの。ターゲットの私がなるべく実家から離れた方がお爺ちゃん達は安全かもしれない。それに私は守ってもらえるから大丈夫。やりたいことも出来そうだからとりあえず頑張ってみたいの」
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