彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
 佑は私の背中を軽くたたいた。

「わかったよ。でも、何かあったらすぐに連絡して来い。爺さんたちのことは任せろ。うちの親父も、警察も協力してくれる」

「ありがとう。いつも甘えてしまってごめんなさい。私も出来るだけ帰るようにするけど、何かあったら教えて」

 私はその夜、荷造りをして送るものと明日持って行くものに分けた。睡眠時間は三時間くらいになったが、しょうがない。二時間の通勤時間を考えて、五時に起きた。朝早いのは平気だ。畑の手伝いは朝早い。

「佳穂。身体に気を付けてね」

「おばあちゃんこそ、お休みはできるだけ戻ってくるから退院したばかりなのに無理しないでね」

「佳穂。とにかく気を付けろ、わしらのことは心配するな。三峰先生が黒羽先生なら佳穂を守ってくれると言うんじゃ。信じるしかなかろう」

「うん」

 私は後ろ髪をひかれながら、そこを後にした。

 電車に乗っていたら黒羽先生からメールが来た。駅まで車で迎えに行くと書いてある。危ないから人気のないところを歩くなと書いてあった。ガラガラとスーツケースを引きずりながら駅を出て、指定されたコンビニの前に行く。駐車場にひときわ目立つスーツ姿の先生がいる。車に寄りかかって立っていた。

「おはようございます。わざわざすみません」

「いいか、周りに気をつけろよ」

「わかりました」

 先生の車に乗って移動した。

「まだ時間が早いからいったんマンションへ戻るぞ。荷物を置いてこよう」

「はい」
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