彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
「ご家族に同居のことを何か言われた?」

「はい。でも、先生は三峰先生のご推薦ですので、祖父も最後は納得してました」

「それならよかった。必ず守るから安心してくれ」

「先生、ご迷惑おかけしてすみません。同居するなら家賃もいくらか出します。家事は出来るだけやりますので言ってください。お手伝いさんとか入ってるんですか?」

「家賃はいい。その代わり、水世には頼みたいことがあるんだ。これからコンシェルジュに君を紹介する。僕の言う通りにして絶対口を挟まないように。全て意味があるからやっている。後で説明するから我慢してくれ」

「……はい」

 マンションへ入った。すごい。警備員が結構いる。先生がスーツケースを持ってくれた。私は先生の後ろをきょろきょろとしてついていく。コンシェルジュの人に先生は近づいて行った。

「黒羽先生、あれ、戻ってこられたんですか?そちらは?」

「ああ、ちょっと彼女を迎えに行って来たんだ。もう少ししたらまた出る。それと君に彼女を紹介したいんだ。()()

 びっくりした。先生が私を名前で呼んで背中を支えた。

「紹介する。僕の新しい秘書で婚約者になる水世佳穂だ。近いうち結婚する予定だ」

「!」

 先生が私の口を手で押さえた。余計なことを言うなという目をしている。

「どうしたんですか?」

 コンシェルジュの人が怪訝な目で見ている。

「ああ、いや……この事実を話すのは君が初めてなんだ。彼女には黙っているようにずっと言っていたからね。驚いたようだ」
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