彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
 チンという音とともにエレベーターが開いた。

「マンション内の決まりごとの変更など、内容は僕宛にメールで送られてくるがここのロビーにも掲示もしてある。目を通しておいてくれ」

 私は急いでメモを始めた。

「受付の方で訪ねてきた人や宅急便以外の預かりものなども預かってくれている。そこの壁にうちの部屋番号が出ていたら、何らかの話があるので、受付に寄ってくれ」

 信じられない。どうしてこんなに色々あるの。自分では何も受け取らないのかな。

「全部下任せなんですね」

「まあ、本人が外部の人と接触しないで済むにはそうするしかないんだよ。セキュリティー重視」

「なるほど……」

 先生は部屋の鍵を開けてどうぞと私を先に入れてくれた。

「ふわあ……すごい!」

 目の前には夜の光の摩天楼。私は広い窓へ走って行った。

「素敵ですね。スカイツリーが見えます」

「そうだな。この部屋の眺望はいいと思う。前にこの部屋へ住んでいた母は、それが良くてこの部屋を選んだそうだ」

 インテリアも落ち着いている。調度品も必要以上にない。

「落ち着いたいい部屋ですね」

「そうか?僕はほとんどキッチンか、書斎と兼用の寝室にしかいないんだ。リビングはほとんど使っていない」

「もったいない……リビングに集まってみんなでパーティーとか楽しそうですよ」
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