彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
「ここはセキュリティーが厳しいと言っただろ。何かあったときに疑われたりするのも大変なので、あまり不特定多数を呼ぶのは面倒なんだ。書類申請が事前にある」

「えー!」

「富裕層も多いから、盗難なども気をつけているんだ」

「落ち着かないところですね」

「逆だよ。僕は落ち着く。変な人が入ってこないし、ここに来てから変な奴に襲われたりすることもなくなった。つけられたりした場合、その対処も任せられるんだ」

 なるほど……。住んでいる人は皆何かしらそういうことがあってここを選んでいるんだわ。安心をとるってことね。

 それから部屋の作りを説明してもらい、ゲストルームも見せてもらった。ここはベージュ基調で男女どちらでも使える感じだ。

「ゲストルームを私室として使ってもらって構わない」

「わかりました」

 先生は私のスーツケースをゲストルームへ入れてくれた。ベージュで統一した部屋。男女誰でも使いよさそうだ。

「他の荷物はどうした?送ったのか?」

「はい、届くのは明日以降になると思いますけど、荷物を作ってここに送る手配をしてあります。そんなことより、さっきの話をしてください」

 すっかり先生の部屋の素晴らしさにうっとりして肝心の大事なことを聞くのを忘れていた。

「ああ、それだが……もう出ないと時間がない。帰ってからにしよう」

「は?」

 また、話をはぐらかされた。
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