彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
「父さん!」

「達也。お前が担当した道東信用金庫の宗田様が先ほどお前を探していた。今日はこの間おっしゃっていたお嬢様を連れておいでだ。一緒に来なさい」

 達也の顔色が変わった。道東信用金庫は三峰先生が昔弁護をした関係で親しくしている。今回は三峰先生が達也を紹介した。そして先日、宗田様が達也のお陰で助かったと案件の終了報告と紹介のお礼に三峰先生の所へ来ていた。

 私はお茶をお出ししただけだったが、宗田様が帰られてから先生が含みのある言い方をしていたのが気になっていた。達也の仕事のことかと思ったが、そうじゃなかったんだと今初めて気づいた。

「父さん、どうして彼女の前でそんなことを言うんだ。やめてくれ。僕がこの道に進むのを迷っていたのは知っているだろう。大学で彼女と出会って、彼女の話を聞いて、やはり僕は弁護士を目指すと決めたんだ。彼女のお陰なんだよ」

「そうか。水世さん、達也を導いてくれてありがとう。達也、お前は水世さん自身がやりたいことを尊重してあげないのか?うちではそれは実現できないし、うちの方針とは相いれない」

「父さん!」

「うちの方針を無視してやるのか?お前は何を考えている?」

 にらみ合った親子を見て私は間に入った。
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