彼女は渡さない～冷徹弁護士の愛の包囲網

　しばらく歩くと誰かがついてきている気がした。びっくりして後ろを向いたが誰もいない。私は走り出した。すると、後ろでわあっという声がして振り向くと先生が男の人の腕をひねり上げていた。

　「せ、先生！」

　私は急いで先生の側に行って隣の人を見た。サングラスではないが、少し色のついた眼鏡をしている。よく見ると私を実家の畑に訪ねてきた例の男性だった。

「……あなたは！」

　その男性は先生の腕を振りほどくと、すごい勢いで逃げて行った。先生は服を直してパンパンと自分でたたいた。

「全くしょうがないな。一人で帰るなと言っただろう」

「先生！どうして……」

「水世が一人で残っていると聞いていたからね。こんなことになるんじゃないかと思って急いで戻ってきた。会食は途中で切り上げた」

「えー！」

　それで、あと何分で終わりそうかとか先生は何度もメールで聞いてきたの？

「どうしてそんな……」

　先生は真顔で言った。

「まったく、タクシーを使えと言ったのに、やっぱり使っていなかったな」

「使わないってどうしてわかったんです？」

「それは見張っていたからだよ」

「それなら声をかけてくださればよかったのに……」